「かかりつけ医を持ってますか」―大病院へ行く前に―

「かかりつけ医」のことについて改めて書きたいと思います。かかりつけ医を持つということはなぜ大切なのでしょうか。多くの患者さんは医師に高い専門性を求めます。だから大学病院などの大病院指向が強くなります。

 この場合、専門性とは特定の病気、特定の臓器に関する専門性を意味しています。心臓の専門医といったものです。ここで考えて頂きたいことがあります。人間の身体は複雑なものです。厄介なことに心の問題も絡みます。腰痛の悩みを頭の専門医に診てもらうのは、間違いではないかもしれませんが適切ではないでしょう。

かかりつけ医とは、特定の病気や臓器ではなく「あなたの専門医」を意味します。日常からかかりつけ医として、健康の相談に乗ってもらう先生を決めておきたいと思います。

病気など健康を損ねる背景には、日常生活のことがあります。家庭のこと、仕事のこと、バリアフリーでないなど家の構造など、いろいろな問題が絡んでいます。身体の痛みが、実は心の問題から来ていることもあります。内科の患者さんの多くが心の病にかかっているということです。日頃の健康状態や生活背景も知ってもらっていて、初めて正しい診療を受けることができるというものです。かかりつけの先生を持ちたいというわけです。

風邪で大病院にかかるという方もいます。病院の先生方は入院患者さんや病状の重い外来患者さんの診療で手一杯です。大学病院などは軽い症状の患者さんを診るところではなく、また一見患者さんのことを正確に診ることができるかどうかも疑問です。かかりつけ医と違って、その患者さんの日常を知らないからです。期待されている役割が違います。

大病院に行く前にかかりつけの先生に相談してみましょう。どこの病院が病状に合った専門性を持っているか適切か、も素人判断ではなく、かかりつけ医のデータベースの方が信頼できると思いますが、いかがでしょう。

医療コンサルタント
(元大阪市立大学大学院特任教授)
松村眞吾