代替療法をご存知ですか?
代替療法という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。現代医学の中心である近代西洋医学とは異なった医療のことを指します。もっとも知られたものとしては漢方があります。漢方は中国に発して日本で発展したものですが、今では保険診療の対象ともなってその効果が多くの場所で証明されています。
問題となったものもあります。最近ではホメオパシーがメディアで騒がれました。その詳しい内容は説明を省きますが、科学的に必要な治療を受けなくさせるといった批判が飛び交いました。効果を主張する意見には「それはプラセボ効果に過ぎない」という反論が寄せられます。プラセボ効果とは偽の薬でも一定の効果がある、というものです。信じれば症状の改善もあるのが人間の体の不思議なところです。
ホメオパシーの是非を論じるものではありません。この他にもプロポリスを飲んでがんが治ったとか、いろいろな話が流布しています。これらの代替療法が漢方と異なるところは、詐欺的な商行為は論外としても、「効いた」という声があるかと思えば、エビデンスがないという疑問もあるというところです。
元々、いろいろな治療法でも効く人と効かない人があります。イレッサという薬は肺がんの薬ですが、この薬で劇的な回復を見せた患者さんもあれば、ご存知の方も多いと思いますが副作用で亡くなった方も多くいらっしゃいます。ましてや多くの代替療法では、いかにも万人に効くようなことが喧伝されたりしますが、効果があるにしても、多くの場合それは偶々、その方に合ったということでしかありません。
近代西洋医学的な考え方は、いわば毒である薬でもって病気を治そうというものであり、それに対して免疫力を高めて自然治癒力を生かそうなどという代替療法でよくみられる考え方には一定の理があります。しかし病気もそれから人間も千差万別であることを忘れてはならないでしょう。
近代西洋医学も絶対ではありません。その意味で代替療法の情報収集もやって良いでしょうし、自然治癒力の大切さも知っておきたいと思います。ただし代替療法の多くは、近代西洋医学以上に絶対ではないと心得るべきでしょう。
大阪市立大学大学院 経営学研究科の特任教授 松村眞吾