団塊の世代を誰が支えるか
誰しも住み慣れた地域で、自分らしく最後まで暮らし続けたいもの。そこで国が進めようとしているのが「地域包括ケア」という考え。地域で主治医(かかりつけ医)から入院、在宅復帰しての療養を統合的にサービス提供する仕組みを作っていこうとしています。
10年もすれば団塊世代が後期高齢者と言われる年齢の75歳以上に入っていきます。もう10年しかない!ということで地域包括ケアの仕組み「地域包括ケアシステム」を各地に作ろう、作っていこうという動きが本格化してきました。行政や医師会、社会福祉協議会といった組織がいろいろと動いています。仕組みはできるのでしょうか。
超高齢社会です。21世紀に入った時には年間死亡者数は100万人を割っていました。今や130万人近く、ピーク時には170万人に及ぶと推計されています。人口も減少し始めました。ここでの問題は仕組みを支える人がいなくなっていく、ということです。介護人材の不足が深刻になっていることはよく知られていますが、支える人口自体が大きく減っていきます。
今、20歳以上65歳未満の2.4人で1人のお年寄りを支えています。騎馬戦型と言われています。2050年には1.2人で1人を支えなければならなくなるそうです。肩車型と言われていますが、こんなことは不可能に思えます。でもお年寄りの3人に1人が支える側に回れば、今の姿を維持できます。
地域包括ケアシステムの一つの狙いがそこにあります。医療介護の統合的なサービス提供と言っても、例えば24時間対応は大変なことです。やはり地域で療養生活を支える互助(助け合い)の仕組みも考えていかなければなりません。家族だけでは支えきれないことは明らかです。地域住民の参加が重要となってくるでしょう。
もう一つ、街をコンパクトに作り替えようというコンパクトシティという構想があります。その中には、言わば出かける街づくり、歩く街づくりということがあります。健康維持、病気や介護予防にも役立つ考え方です。
地域包括ケアもコンパクトシティも、要するに街づくりの話です。「介護なんか関係ない」と思う人々も多いわけですが、互助の街づくり、健康を守る街づくりは、住民皆の課題でしょう。もう始まっています。
医療コンサルタント
(元大阪市立大学大学院特任教授)
松村眞吾