大病院にかかると5,000円?高いと思いますか?
この4月から大学病院や500床以上の大病院で診療を受けようとする場合、紹介状のない場合は初診で5,000円以上の特別代金を支払わなければならなくなりました。緊急の場合は例外ということですが、それでもかなり高額です。貧乏人は医療も制限されるのか、診療を抑制するのはおかしい、といった声も上がっているようです。なぜ、こんな政策が打ち出されたのでしょうか。
対象となった大病院は急性期、さらに高度急性期と呼ばれる専門性の高い医療機能を果たす役割を期待されています。働いている医師は臓器別、疾患別に特化した、高度な専門能力を持った医師たちです。例えばがん治療に当たっているとか、心臓病の専門家だったりするわけです。こういった医師らには、それぞれの専門を生かした医療を行なってもらいたい、それに集中して欲しいというのが、国の期待でもあり、医師ら自身の気持ちです。
専門外の医療に当たるのは、いわば専門技術を生かすことのできない、もったいない働き方となるわけです。街中のクリニック、身近な病院はどうでしょうか。よくある病気を診てくれて、症状に応じて専門の病院に紹介してくれる役割を期待されていると言えましょう。いわゆる、かかりつけ医の役割です。38度の熱が出た、でも自分で歩いて病院に行ける、といった時、まずはかかりつけの医師にかかることが望ましいとされています。
差がありますが、医師不足が問題となっている地域も多くあります。高齢者が増えてくると病気がちになって病院に行く回数も増えてきます。医療を受ける権利は誰にもあるのですが、大病院の医師は専門に集中してこそ社会的な利益も大きいわけです。逆に患者さんの生活背景を知り問診などにより病気を見極める技術はかかりつけ医にあるべきものです。かかりつけ医で日常的な医療を、大病院で専門医療をという分業が必要なわけです。
軽い風邪とまでは行かなくとも、本来、かかりつけ医が診るべき患者さんを数多く診療して、クタクタに疲れ果てた後で、病棟の入院患者さんの治療に向かう。医療の質にも影響してきます。
少し乱暴かもしれませんが、例えてみれば、フランス料理レストランでお茶漬けを注文することも許容されてきたのが日本の病院です。超高齢化を迎える日本では、効率よく医療を回していくべきであり、だから大病院とかかりつけ医の間などの役割分担が必要となるのです。
医療コンサルタント
(元大阪市立大学大学院特任教授)
松村眞吾