歩くことと健康づくり-思うより深い関係

コロナ禍も1年半となって巣ごもり生活が長引き、外出の機会も減っている人が多いようです。ワクチン接種が進むにつれて、コロナ自体もですが、このことによる影響が心配だと言う医療介護関係者も増えてきたように感じます。

 歩くこと、それは運動だけを意味するものではありません。地域の健康づくりのアイデア出しで「ウォーキングでポイントを集めて地元の商店街で買いものが割引に」といった案が出てきます。肝心なことを見落としてないでしょうか。歩いて楽しい街であり、誰かと出会える機会であってこそ、出かけてみようと思います。単に歩くだけでは面白くありません。

 出かけることは人に会うことにつながります。外に出て街を歩こうという気になるのも、新しい「発見」、「出会い」があってこそではないでしょうか。ひたすら歩くことが好きという方もあるでしょう。よく無心に走っている方も見かけます。筆者は「健康のため」歩こうという気持ちには、なかなかなれません。ただ、近所に子どもの頃から通い慣れた商店街があります。そこでは毎回、わくわくする何かに出会います。その商店街だからこそ歩こうという気になります。歩けば腹も空いて食欲も出ます。夜もよく眠れます。

大きなショッピングセンターに行ったりすると知らない間に万歩計が1万歩を記録していたなどということがあります。毎日1万歩を目標に歩く。長続きしていますでしょうか。意外と根気強く続けておられる方もいますが、修行僧のようで楽しそうには見えません。人それぞれではあるでしょうが。

まだコロナ禍はしばらく続くでしょう。それでも徐々に人と出会う機会は増えていっています。久々に街を歩いてみたら新たな発見もあるかもしれません。花のこと、家庭菜園のことなどを楽しそうにフェイスブックやインスタグラムに投稿する人も増えています。家の外の魅力を再発見する人が増えていると思います。歩くことは、その最大の手段となります。発見する、人に出会う、季節を感じる、日常に彩りをつける。分かって頂けると思います。

健康のため、黙々と夜の街を歩き続ける。それも良いと思いますが、「楽しむ」ために手段として出かける、街を歩くのはいかがでしょうか。歩けば世間との交流もある。どんな健康づくりよりも、それが健康づくりになっていくはずです。

 

医療コンサルタント
(元大阪市立大学大学院特任教授)
松村眞吾